緩和ケア

治療の終了を受け入れられずすべての診療を拒否した患者さんから学んだこと

ジュン

こんちちは、ジュン(@CNforCPN)です

延命目的の化学療法にはいつか終わりがきます。

[chat face=”man1″ name=”患者さん” align=”left” border=”blue” bg=”none” style=””]いつまで治療できるんだろう?
寝たきりになってもいいから治療は最後まで続けたい[/chat]

治療をやめたいと悩まれる人もいれば、こんな風にどんな状況になろうとも治療を諦めたくない人もいます。

抗がん剤は長く使っているとがん細胞も耐性ができていつか効かなくなる日がきます。

まだ使える抗がん剤があれば種類を変更して続けていきますがそれにも限界がきます。

とても印象に残った治療を諦められなかった患者さんのお話です。
個人情報を守るため少しアレンジしてあります。

抗がん剤の種類を変更していたとき

化学療法を始めるときはその病気に一番よく効く薬から始めます。

効果がある間は同じ薬で治療を続け、効果が弱くなると次の薬と変わっていきます。

最初のうちは複数の薬があるので患者さんはショックを受けながらも薬の変更を受け入れる方が多いと思います。

[chat face=”man1″ name=”患者さん” align=”left” border=”blue” bg=”none” style=””]効果がなくなったんだ…。
でもまだ薬はいくつか残っているから大丈夫[/chat]

きっとこんな風に自分に言い聞かせている人も多いのではないでしょうか。

でも薬の変更を繰り返していくと、いつかは『もう次がない』というときがきます。

[chat face=”man1″ name=”患者さん” align=”left” border=”blue” bg=”none” style=””]前に使っていた○○はまた使えませんか?
それなら△△はどうですか?[/chat]

治療を諦められない患者さんは、以前使用していた効果が弱くなって中止した薬をもう一度使いたいと医師に訴えることもあります。

どの抗がん剤も効果がないとはっきりと伝えられる

効果がないとわかっていて抗がん剤を使用することは倫理的な問題に問われます。

患者さんは食欲が落ち体力もなくなってくる人が多く、残された時間を意図的に短くしてしまう可能性も高まるからです。

目の前の患者さんがどうしても治療をしてほしいと懇願しても、私たち医療者はお断りしないといけないんですね。

[chat face=”man2″ name=”医師” align=”left” border=”blue” bg=”none” style=””]今の状態では命の時間を縮めてしまうのでもう抗がん剤を使うことはできません[/chat]

がんという病気になったとき、きっと命の終わりをイメージされることが多いでしょう。

それでも気持ちの整理をつけられる人ばかりではないことは、多くの患者さんを見てきて実感しています。

そういう患者さんにとっては『もう抗がん剤は使えません』という医師からの言葉は死刑宣告とも言えるものなのかもしれません。

診察日に病院に来なくなった

このときの患者さんの気持ちを推しはかることは、これまでの患者さんの言葉や意思などを長く見続けてきた私たちには比較的容易でした。

[chat face=”woman2″ name=”看護師” align=”right” border=”red” bg=”none”]きっと病院に来ると帰れないと思っているんじゃないかな[/chat]

治療を諦めたくないと思っていても、自分の体力が治療できないことを強く実感させていたのだと思います。

病院に来たら入院させられて生きては自宅には帰れない、そう感じられていたのだと思います。

最後の時間を自宅で過ごすには十分な医療体制を整えることが必要になります。

  • 自宅に看護師さんが来てくれる訪問看護
  • 自宅で医師が診療をしてくれる訪問診療

この2つはどうしても利用して欲しい在宅サービスです。

しかし、それすらも受け入れてくれませんでした。

しばらくはご家族だけが来院され必要な薬を処方して、自宅での過ごし方や必要なサービスについて情報提供し患者さんと相談してもらいました。

同時に訪問看護をいつでも導入できるように事業所と連絡を取り合い準備態勢を整えました。

家族の不安やストレスに目を向ける

自宅で医療者の支援を受けずに過ごすということは、患者さんを見守るご家族には相当のストレスがのしかかっている状態です。

不安などの心の問題だけでなく、身体的な介護疲れと合わせて過度なストレス下に置かれている状態です。

相談相手もなく、いつ患者さんの状態が悪くなるかと思うと夜も眠れないという場合も少なくありません。

私たちにできることは、電話でご家族と連絡を取ることだけでした。

そこで毎日患者さんの様子を聞き、その都度医療サービスの利用について話し合っていただきました。

いよいよ自分で動けなくなりつつあるときに、訪問看護だけは了承され翌日初回訪問となり、合わせて介護ベッドなど療養環境も整えることができました。

それから訪問看護師と連日連絡を取り合い、訪問診療の開始準備や来院される場合についてあらゆる想定をし、ご家族とも対応を協議しました。

患者さんは最後まで意思を貫いた

このようなケースが良いのか悪いのか、それには答えはないと思っています。

生きたいともがき苦しみ、ご自分の思いを貫いたことは患者さんを知るすべての人が患者さんらしかったと思っています。

これって人生会議(ACP)とも通じるのではないでしょうか。

https://petitnurse.com/advancedcareplanning

大切な人とたくさん話をしよう

最後は病院に搬送され旅立たれましたが、人生の終わりが清々しいことだけが正しいわけではないと思いました。

もちろん最悪のケースも想定しましたし、ご家族も覚悟されていました。

きっとどんな結果になっても安堵したのだと思います。

私や大切な人、家族がどんな生き様をしているのか、したいと思っているのか。

支えてくれる人たちにわかってもらうことって難しいし大変だけど、とっても大切なことだと思い知らされました。

今は元気でもいつかくる人生の終わりのとき

私ならどう在りたいか、何かの節々で考える習慣ができるといいですね。

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