先日患者さんから手術日程を決めるのに、月末でいいのか月初めに変えた方がいいのかという相談をいただきました。
これは高額療養費制度を意識しての質問です。
今回は『高額療養費制度を最大限に利用すること』について、考えてみたいと思います。
高額療養費制度とは
医療費の家計負担が重くならないように、医療機関で支払う医療費が1ヶ月(1日から末日まで)で上限額を超えた場合、その超えた額を支給する制度です。
上限額は年齢や所得に応じて決められていて、いくつかの条件を満たすことによって負担をさらに減額する仕組みもあります。
参考:厚労省資料より
高額療養費制度に適応される費用は保険診療分です。
入院した場合の差額ベッド代や食費など自費分は適応にはなりません。
詳しくはこちら→高額療養費制度を利用される皆さまへ(厚労省)
高額療養費制度を利用するには
日本は皆保険制度になっているので、国民保険、社会保険(協会けんぽなど)必ず何かしらの健康保険に加入しています。
いずれかの健康保険に加入していれば医療費が高額となった場合、高額療養費制度は誰でも利用することができます。
この制度を利用するタイミングは2つあります。
1.限度額適用認定証で医療機関での窓口負担の時点で支払いを上限額に抑える
2.後日高額療養費の支給申請を行い上限を超えた分を払い戻してもらう
保険料未納がある場合は高額療養費制度の対象になりません
限度額適用認定証を取得する
入院することがあらかじめわかっている場合、入院前に限度額適用認定証を発行してもらい病院窓口に提示することで、退院時の窓口負担を上限額までに抑えて支払うことができます。
発行は加入している健康保険の窓口に依頼します。
国民保険なら市区町村、社会保険なら加入している健康保険の保険者です。
メリットは窓口での支払いから適応となるため過剰支払いがなく済むことです。
*69歳以下の方は全員
*70歳以上の方:非課税世帯、現役並みⅠ・Ⅱ(年収約370万~1160万)の方
70歳以上で自分が対象かどうかわからない場合は、市役所などの国民保険の窓口で確認ができるので聞いてみるといいでしょう。
高額療養費の支給申請をする
こちらはご自身で加入している医療保険の保険者に、高額療養費の支給申請書を提出・郵送することで支給が受けられます。
上限を超えた分が払い戻されるまでに数ヶ月かかることもあります。
1.医療費支払後に自分で申請する
2.支給までに1~2ヶ月かかる
経済的に支払いが困難な方にはかなり負担がある方法なので、医療費が上限額を超えるとわかっている場合は先に限度額適用認定証を発行してもらう方がおすすめです。
高額療養費制度を最大限活用する方法
高額療養費制度は単月にかかった医療費に対して上限額を超えた分が支給される制度です。
毎月1日~末日まで、つまり月が変わるとゼロからのカウントになります。
入院する場合、月末に入院して退院が翌月になる場合は、2ヶ月分に分散されることになります。
予定入院の場合は入院のタイミングを工夫することで、医療費の支払いが格段に変わってくる可能性があるということです。
緊急性がなく治療タイミングを主治医と相談できるなら、月初に入院できるかを相談するといいかもしれませんね。
医療保険で利用されたサービスは合算できる
患者さんによっては複数の医療機関を利用している方も多いと思います。
また、お薬をもらうのには調剤薬局で処方薬を受け取りますね。
複数の機関で支払いがある場合は、一旦それぞれの機関でお支払いをしていただく必要があります。
それは、患者さんがどの医療機関でどの程度の支払いをしているかは、それぞれでの機関ではわからないからです。
その場合、限度額適用認定証を持っていても1ヶ月の支払い上限を超えることになります。
ですから限度額適用認定証を持っている方も、翌月以降に高額療養費の支給申請をすることになります。
訪問看護を医療保険で利用している方も合算できる?
がん治療中の方の中にはご自宅で訪問看護を利用している方もいらっしゃいます。
訪問看護は医療保険、介護保険どちらかでサービスを利用するのですが、医療保険で利用されている方は高額療養費に合算することができます。
複数の医療機関を利用していることと同じになりますので、あとから高額療養費の支給申請をすることで上限を超えた分は戻ってきます。
70歳未満の方は1医療機関で21000円以上の支払いがあることが条件となります。
高額療養費制度を最大限に活用する方法のまとめ
公的な健康保険制度に加入している人なら誰でも利用できる高額療養費制度。
ほとんどの方は保険料をしっかり支払われていると思うので、誰でも利用することができます。
私がおすすめするのは限度額適用認定証を発行してもらい、医療機関での窓口負担を抑える方法です。
ぜひ加入している健康保険の保険者に問い合わせてみましょう。
がん治療を受けている患者さんは、外来診療でも高額になってしまいますよね。
この制度は入院だけでなく外来診療での医療費にも同じように利用できますので、安心してくださいね。
また、世帯合算や多数回該当と言って、さらに医療費支払いの負担が軽減することもあります。
複雑なのでここでは紹介しませんが、受診されている医療機関や市区町村窓口でご相談できますのでご利用ください。
高額療養費制度の他にもさまざまな制度があります。
■高額医療費貸付制度
■高額介護サービス費
こちらの情報も今後ご紹介していく予定です!