緩和ケア

代理意思決定をする際に意識したい大切なポイント

ジュン

こんにちは、ジュン(@CNforCPN)です。

先日看護師さんの院内研修でケースレポートの発表会がありました。

みなさん、忙しい中とてもよくまとめられて私自身も自分の看護を振り返るいい機会になりました。

その中で代理意思決定をテーマにまとめられたケースがあったんです。

発表を聞いていての私の感想は

ジュン

やっぱり臨床現場で代理意思決定をサポートするのってまだまだ難しいのかな

ということでした。

今回は代理意思決定とは何か、代理意思決定をサポートする上で大切なことを振り返ってみようと思います。

意思決定とは

ふだん私たちは日常的に意思決定を繰り返しながら生きています。

では意思決定とは何かと問われたら答えられるでしょうか。

ある目標を達成するために,複数の選択可能な代替的手段の中から最適なものを選ぶこと

大辞林

選択肢がなければ意思決定することなくその道に進むのでしょうが、世の中は多くの選択肢に溢れているので、どれを選ぶのかは自分で決めて選択しています。

今日は何を食べようか、どんな職業に就こうかなど多種多様な場面で選択しているのです。

では自分で意思決定が出来ない状態とはどのようなことなのでしょう。

意思決定能力を評価する

意思決定能力の定義をみてみましょう。

①自分の意思を伝えることができること,②関連する情報を理解していること,③鎮静によって生じる影響の意味を認識していること,および,④選択した理由に合理性があること,をもとに判断する。

日本緩和医療学会 苦痛緩和のための鎮静に関するガイドライン

現状・状況をしっかり理解して、その上で自分の意思を他者に伝えられることが大切なんです。

病気や事故などによって状況をしっかり理解できない、自分の意思を他者に伝えられない場合は、意思決定能力がないと判断されるのです。

意思決定能力の評価

重要な意思決定を支援するためには、患者さんに意思決定能力があるかどうかを評価しなければいけません。

では意思決定能力の評価はどのように行うのでしょうか。

それは1人の医師や看護師が行うのではなく、患者さんに関わる複数の関係者で構築される医療チームで評価します。

意思決定能力は,経験を十分に有する医療チームによって,そのプロセスを明記したうえで評価されることが望ましい。特に,抑うつや軽度の意識混濁は見落されやすいが,頻度が高く,患者の意思決定能力に影響を与え得るので,適切な評価が必要である。

● 関連する情報を理解していること

● 鎮静によって生じる影響の意味を認識していること

 「今,苦しさを和らげるために,うとうとして過ごす(ぐっすりと眠る)方法があるというお話をしましたが,どのようにご理解されましたか?」あるいは「もし,眠って苦しさを和らげる方法を取った場合,どのようになるとご理解されましたか?」という問いかけに対して,適切な返答ができる。

● 選択した理由に合理性があること

 「○○さんは,苦しさを和らげるために,うとうとして過ごす(ぐっすりと眠る)方法をご希望される,と伺いましたが,その理由を教えていただけますか?」に対して,了解可能な理由を挙げられる。

日本緩和医療学会 苦痛緩和のための鎮静に関するガイドライン

これは鎮静に関するガイドラインのため評価の中で鎮静に関する記述がありますが、重要な選択を考える場面に応じて同じように確認していくことは必要なことです。

患者さんが意思決定能力がないと判断された場合、代理意思決定者とともに患者さんの価値観や以前に患者さんが表明していた意思に照らし合わせて、現在の状態で患者が何を希望するかについて家族とともに慎重に検討することになります。

代理意思決定とは

代理意思決定とは、患者さんに意思決定能力がない場合に、代理意思決定者とともに患者さんの意思を推定し選択肢を選ぶことです。

医師

心臓や呼吸が止まったときの延命処置はどうしますか?

患者さんが自分で決められない場合、ご家族に対してこのような問いかけがされる場面があります。

これは「患者さんの代わりにご家族が決めてください」と言われているのですが、大切な家族を失おうとしているご家族は自分が大切な人の命の選択をするということにつらすぎて決められないこともあるんです。

  • こんな大切なことを代わりに決めていいのか
  • 家族としては少しでも長く生きて欲しい
  • こんな責任重大なこと決められない!

これはご家族としては当然の気持ちだと思います。

それでは代理意思決定に際してご家族と話し合うときにポイントについてご紹介しますね。

代理意思決定を支援するときに大切なポイント

患者さんに意思決定能力がないとされた場合、通常このような問いかけがされることが多いんです。

医師

心臓や呼吸が止まったときの延命処置はどうしますか?

でもこれって、「患者さんが決められないから代わりにご家族が決めてくれませんか?」と単に投げかけているだけなんですよね。

代理意思決定というのは、今の状況では患者さんならどのような選択をすると思うか、ということを医療者とご家族(代理意思決定者)と一緒に話し合うことなんです。

医師

今の病状は○○です。
心臓や呼吸が止まったときの延命処置はどうしますか?

このように問いかけられた場合と

医師

今の病状は○○です。
このような状況のとき、患者さんならどのような選択をすると思いますか?

このように問いかけられた場合では、印象はどう違うと感じますか?

もちろん多くのご家族は「患者さんなら~」と問われても、ご家族の思いや選択を答えられる方も多いです。

その場合は

医師

ご家族のお気持ちとしては、それは当然のことですよね。

と、まずはご家族のつらい気持ちを一旦受け止めます。

その上でもう一度

医師

このような状況のとき、患者さんならどのような選択をすると思いますか?
これまで患者さんとこのようなお話をしたことがありますか?
そのとき患者さんはどんなことを言っていましたか?

というように、患者さんの気持ち、考え、価値観をご家族と一緒に推定する作業をしていきます。

また、医療者がこれまでの患者さんとの関わりの中で把握している患者さんの価値観や考えがあれば、それを基にご家族と相談します。

医師
  • 患者さんは以前こんなことをお話していました。
  • 患者さんはこんな人だったので、こういうときはこんな選択をするんじゃないかと思うんです。

相談の焦点は患者さんの考え方、価値観、これまでの人生を振り返ってどのように生きてきたか、どんなことを話されていたか、になるんです。

ここがブレてしまうとご家族が自分たちで大切な決定をしなければいけないと責任を強く感じてしまい「決められない」という事態に繋がる可能性が高まります。

また家族だけに決めさせるということは、責任を家族に負わせるということを感じさせてしまうことにもなりかねません。

重要な決定は、医療者とご家族と相談して、患者さんの意思を推定し、それを基に最終的には医療者から提案し、ご家族が受け入れられるように支援していくことが大切です。

  1. 話の中心は必ず患者さんであること
  2. これまでの患者さんとの関わりの中から推測される患者さんの意思をご家族と一緒に推定する
  3. ご家族だけに決めさせない
  4. 患者さんの意思を推定できたら、医療者から最善の方法を提示してご家族が受け入れられるように支援する
  5. 医療者とご家族と一緒に決めていくという意識を持つこと
  6. 重要な決定の責任を共有する

代理意思決定のまとめ

患者さんの代わりにご家族と意思決定を進めていく上で、同じことを相談しようとしているのに問いかけの表現次第で全く違う中身になってしまうことがあります。

医療者は、看取りの場面で困らないようにとご家族に心肺蘇生はしないという確認を取りたいとの思いで相談します。

そこばかりに意識が向いてしまうと、無意識であっても「早く決めてよ!」とご家族に決定を迫ってしまう事態になりかねません。

これまでの患者さんの生き方、価値観、考え、大切にしてきたものは何かをご家族と話し合いながら、医療者とご家族で決めていけること、その責任を共有することが何より大切なことです。

そのためには、日頃から大切な人といろいろな話をしておくことです。

患者さんの思いを代弁する

それは患者さんだったら今このとき何を選択するだろうかという思いをみんなで推定することです。

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