こんにちは、ジュン(@CNforCPN)です。
最近、化学療法が終わり経過観察期間に入った患者さんがいます。
その方は65歳未満で介護保険を利用されていました。
経過観察の期間になります。
もし治療が必要な状況になったとき今のように介護保険を使っているような状態では治療はできません。
介護保険を使っているということは『末期』ということで化学療法を行うような状態ではないからです。
このように医師から説明を受けた患者さんは青天の霹靂。
私は治療は続けて欲しい、続けられる限り受けたいと思っているのに!
かなり混乱されて状況が全く理解できなくなってしまいました。
結論からいいますと介護保険を利用していても化学療法は受けられます。
なぜ医師によって解釈の違いが生まれてしまうのか考えてみます。
介護保険制度のおさらい
介護保険制度では利用できる人に区分があります。
第1号被保険者:65歳以上の方
第2号被保険者:40~64歳の医療保険加入者の方
65歳以上の方は介護保険を利用していても治療継続には何の支障もありません。
ここで今回の問題となったのは65歳未満の方です。
第2号被保険者の方は介護保険を申請するにあたり、要介護状態が特定疾病による場合とされています。
この特定疾病はがんの場合「がん末期」という記載が必要になります。
介護保険で言う『末期がん』と病状から見る『末期がん』ははっきりいって全く違います。
医療的に言われる『末期』という言葉は狭義の意味合いとして、治療効果がなく症状緩和に重点を置いて治療を行うような状況になったときと、判断している医師が多いと思います。
介護保険では要介護状態になった要因が『がん』によるものかどうか、それだけを示すことができれば利用できるはずなんですね。
65歳未満の方が介護保険を利用していると化学療法は続けられないのか
結論からいいますと使えます!。
先ほども書きましたが、病状から評価する『末期がん』と介護保険制度でいう『末期がん』は意味合いが違います。
厚生労働省から示されている『がん』の場合を見てみましょう。
【特定疾病の選定基準の考え方】
がん(医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る)
引用 厚生労働省HPより
『医学的知見に基づいて回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る』
この文言をどう捉えるかですが、そもそも完治の見込みはないけれど延命を目的に化学療法を行っている患者さんは、おおよそ回復の見込みがない状態に至ったと言えるのではないでしょうか。
これはあくまでも私個人の考えです。
病気は治らない、かつ病気のせいで要介護状態に至っている。
要介護状態とは何かしらの手助けが必要だということですが、それだけで化学療法ができない状態だとは言い切れないと思います。
化学療法の適応とは?
ここでの適応は病気の状態ではなく体力的な事柄で考えてみます。
化学療法は全身治療になるので体力がないと治療は続けられません。
この体力的な面を評価するツールが、パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)です。
■PS0:まったく問題なく生活できる
■PS1:激しい活動は制限されるが歩行可能で軽作業や座っての作業は行える
■PS2:歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない
日中の50%以上はベッド外で過ごす
■PS3:限られた自分の身の回りのことしかできない
日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
■PS4:まったく動けない、自分の身の回りのことができない
完全にベッドか椅子で過ごす
通常化学療法はPS2以上、つまりPS0~2の状態でないと行えません。
介護保険を利用される場合でもPSが2以上の方はたくさんいらっしゃいます。
ですから、介護保険を利用していることと、化学療法が継続できないということは本来であれば関連はないと言えると思います。
なぜ介護保険を利用していると化学療法ができないと言われてしまうのか
これは介護保険の利用が特定疾病である場合、医師がどう解釈しているかで変わってくるようです。
国が示しているものと医師個人が解釈していることが異なっている場合があるのが実情です。
実際に介護保険を利用していても問題なく治療を継続している医師もたくさんいます。
医師個人の解釈の違いで患者さんが異なる対応をされるということはあってはならないことです。
しかし、現場ではその解釈を訂正することがこの上なく難しいのです。
『がん患者に係わる要介護認定等の申請に当たっての特定疾病の記載等について』
という事務連絡が2019年に厚生労働省から出されました。
これは介護保険を申請するにあたり申請書に『がん末期』と記載しないといけないことが、がん患者さんの介護保険利用を妨げているというところから出さたものです。
今までは『がん末期』との記載を求められていましたが、今は『がん』と記載すればしっかりと受理されます。
しかし主治医意見書には『がん末期』であることが、確認できるように記載しないといけないことには変わりありません。
これが医師が勘違いする原因ではないでしょうか。
どうか諦めないで
介護保険を利用してできる限り自立した生活を送ることは、化学療法を長く続け患者さんの『生きたい』を支えることに繋がります。
医師個人の解釈の違いで治療を受けられないということはあってはならないことです。
もしそのような状況に遭遇した場合は、この先もその医師に治療をしてもらいたいと思うかを考えてみてください。
納得できないのならばセカンドオピニオンも選択肢のひとつです。
あなたの命
あなたの人生
しっかりと納得して過ごせることが一番大切だからです。
まずは病院にいるがん関連の認定看護師や専門看護師、がん相談支援センターなどに相談してみてください。
介護保険を利用していると化学療法は続けられないのかのまとめ
介護保険を利用していても化学療法は続けられます。
介護保険利用の有無ではなく実際の患者さんの体力を医師が評価すればいいのです。
もし納得のできる対応をしてもらえていないと感じたら、セカンドオピニオンも考えてみてください。
国の制度ももっとがん患者さんの状況に即して、利用しやすい制度に改正してもらいたいと思います。
私の個人的な考えも含まれているので雑記としてまとめました。